ゲーム業界を目指す多くの人が抱く疑問の一つが、「ゲームディレクターとゲームプロデューサーの違いは何なのか」ということです。どちらもゲーム開発における重要なポジションですが、実際の業務内容や責任範囲、求められるスキルには大きな違いがあります。両職種の違いを理解することは、自分のキャリアパスを考える上で非常に重要です。この記事では、それぞれの役割を詳しく解説し、どちらの道を選ぶべきかの指針を提供します。

ゲームディレクターとは

ゲームディレクターは、ゲーム開発現場における「総監督」の役割を担います。開発や制作にかかわる全てのスタッフのリーダーとしてチームをまとめ、ゲームの企画から完成までを指揮します。スタッフそれぞれに適切な役割を与え、スケジュールの管理やアドバイス、指示を行っていきます。

具体的な業務内容 ゲームディレクターの役割には大きく「どのようなゲームを作るか考えること」と「開発現場を管理すること」の2つがあります。プロジェクトが決まった時、どのようなゲームにするのかアイディアを出して、ゲームの方向性やベースを決めていくのがディレクターの重要な仕事です。

企画段階では、ゲームプロデューサーやゲームプランナーとともにプロジェクトに関わり、新しいゲームのアイデアやコンセプトを考え、ストーリーやゲーム設定、プレイの要素などの細かい部分についても打ち合わせを行い、全体の方向性を決定します。開発チームの構成にも関わり、プログラマーやゲームデザイナー、サウンドクリエイターなど各分野の専門家の中からチームメンバーを選定し、適切な人員配置を行います。

必要なスキルと経験 ゲームディレクターには幅広く知識やスキルが求められます。ゲーム制作の全体像の知識が必要となり、制作に関わるスタッフは様々いますが、ゲームディレクターはスタッフひとりひとりの業務を理解しなければなりません。多くのスタッフとしっかりコミュニケーションを取りゲームの完成まで円滑に進める必要があるためコミュニケーション力は必須と言えるでしょう。

キャリアパスと年収 『ゲーム開発者の就業とキャリア形成2019』によると、ゲームディレクターの平均年収は615.9万円でした。これは、デザイナーやエンジニアなどの制作スタッフに比べて高い水準です。また、実績が直接評価されるポジションでもあるため、関わったゲームの成り行きや会社によって、1,000万円クラスの年収を得ているゲームディレクターもいます。

https://creator.levtech.jp/jobguide/detail/23

ゲームプロデューサーとは

ゲームプロデューサーは、ゲーム制作を統括管理する職種です。「どのようなジャンルのゲームを制作するのか?」「リリースするプラットフォームは何にするのか?」などはもちろん、開発費の調達、販売促進など、業務は多岐にわたります。つまり、ゲームの良し悪しだけではなく、ゲームの売上にまで責任を持つのがゲームプロデューサーなのです。

具体的な業務内容 ゲームプロデューサーは、ゲーム制作のプロジェクトを取りまとめることが主な仕事です。予算や制作に関わるスタッフの選定、実際に制作していくスケジュール等さまざまな面をコントロールするという役割を持っています。さらに、ゲームディレクターやプランナーと一緒に新しいゲームの企画をしたり、宣伝広報活動の企画をしたりするのもプロデューサーの大切な仕事です。

プロジェクトにおける企画、人事、予算、進行の統括を行い、ゲームの採算性についての責任を負う、プロジェクトの総責任者です。ゲーム制作に伴う予算調達やスポンサー開拓、広報、マスコミ対応なども行います。売上に伴う人件費や広告費用などの管理は、ゲームプロデューサーの重要な仕事のひとつです。

必要なスキルと経験 開発スケジュールが滞りなく進むよう、プロジェクトを管理するマネジメント能力が必要です。万が一プロジェクトの進行中にトラブルが生じた場合、迅速に対応しなければいけませんので、高い問題解決能力も必要とされます。開発スタッフには、ゲームディレクター、シナリオライター、デザイナー、プログラマーなど、さまざまな人が関わってきますので、そうしたスタッフ達と円滑にコミュニケーションを取ることが求められます。

キャリアパスと年収 一般財団法人 デジタルコンテンツ協会が作成した「デジタルコンテンツ制作の先端技術応用に関する調査研究 報告書」によると、ゲームプロデューサーの平均年収は692.5万円で、ゲーム関連職で一番高額です。制作チームの中でも高額な給与を取ることが多く、人気タイトルのプロデューサーの場合、年収が1000万円を超えることも珍しくありません。

https://mynavi-agent.jp/creative/jobindex/02.html

両者の違いを徹底比較

責任範囲の違い ゲームディレクターは制作の現場でスタッフを取りまとめる仕事です。このため現場仕事がメインになります。一方でゲームプロデューサーは、プロジェクト全体を取りまとめる仕事です。現場で仕事をする機会はゲームディレクターほど多くないものの、ゲーム制作に幅広く携わることができます。

役割分担としては、ゲームプロデューサーは「作ったゲームを売る」、ゲームプランナーは「売れるゲームを設計する」、ゲームディレクターは「設計されたゲームを作る」というのがそれぞれの仕事です。ゲームディレクターが開発現場の責任者にあたるのに対して、ゲームプロデューサーは販売促進も含めたゲーム製作全体の責任者です。

関わるフェーズの違い ゲームディレクターは企画段階からプロジェクトに関わり、ユーザーに支持されるゲームを作り上げる方法を考えます。開発の進行管理や品質管理が主な業務となります。

ゲームプロデューサーは企画からリリース後の運営まで、より幅広いフェーズに関わります。ゲームが無事に完成して公開したら、ゲームをヒットさせるためのプロモーション戦略を考えていきます。体験版を配布したり広告を出したりするなどして、ユーザーの期待をあおっていきます。

求められるスキルの違い ゲームディレクターには、ゲームに関する幅広い知識やスキルが求められます。企画から完成までのすべてのプロセスについての知識がなければ、スタッフとのミーティングもできません。ゲームディレクターはゲームの具体的な制作というクリエイティブな面を担います。

ゲームプロデューサーはプロジェクト全体の総責任者として、全体的な戦略や宣伝活動などのビジネス面を担います。ゲーム市場や投入できる予算規模、開発スタッフの能力などを見極めながら、いかに利益を生み出せるかビジネス的な側面を監督するのがゲームプロデューサーです。

社内外との関係性の違い ゲームディレクターは主に社内の開発チームとの連携が中心となります。プログラマー、デザイナー、プランナーなど、直接開発に関わるスタッフとのコミュニケーションが重要です。

ゲームプロデューサーは社内外問わず幅広いステークホルダーとの関係構築が必要です。クライアントとの打ち合わせや開発費用などの管理を行い、スポンサー開拓や広報、マスコミ対応なども担当します。

意思決定の権限と範囲の違い ゲームディレクターは開発現場における意思決定権を持ちます。ゲームの仕様や品質、開発手法などについて最終的な判断を下します。しかし、予算や全体戦略については上位のプロデューサーの判断に従う必要があります。

ゲームプロデューサーはより広範囲な意思決定権を持ちます。プロジェクト全体の方向性、予算配分、マーケティング戦略など、ビジネス面での重要な決定を行う権限があります。立場上は、プロジェクトを統括するという役割を担っているゲームプロデューサーの方が上位のポジションと言えます。

実際のゲーム開発での協業関係

プロジェクトでの役割分担 実際のゲーム開発において、ゲームディレクターとゲームプロデューサーは密接に連携して作業を進めます。プロデューサーは現場の状況を把握している必要があるため、ゲームディレクターと連携をとり、現場のスケジュールに遅延が起こっていないか、人員不足にともなう増員の調整など、定期的に現場との情報共有を行い、滞りなく制作が進行するよう調整を行うことが重要です。

開発がスタートしたら現場の管理はゲームディレクターらに任せ、スタッフの配置やスケジュールや予算の管理など、プロジェクト全体の統括に専念します。もし、開発が遅れるようなことがあれば、発売日を変更して追加の資金調達などに奔走するのが、ゲームプロデューサーの役目です。

連携が重要な場面 企画段階では、3者(プロデューサー、ディレクター、プランナー)が自分の立場からアイディアを出し合い、ゲームのアウトラインを作っていきます。この段階でのコミュニケーションと合意形成が、プロジェクト成功の鍵となります。

また、開発中の仕様変更や予算調整、スケジュール見直しなどの重要な決定事項については、両者の緊密な連携が欠かせません。現場の実情を把握するディレクターと、全体最適を考えるプロデューサーの視点を組み合わせることで、適切な判断を下すことができます。

対立しやすいポイントとその解決法 ゲームディレクターは品質やクリエイティビティを重視する傾向があり、ゲームプロデューサーは予算やスケジュール、収益性を重視する傾向があります。このため、品質向上のための追加開発時間や予算について意見が分かれることがあります。

こうした対立を解決するためには、プロジェクトの目標と優先順位を明確にし、定期的なコミュニケーションを通じて相互理解を深めることが重要です。また、どちらも最終的にはユーザーに喜ばれるゲームを作るという共通の目標を持っていることを再確認することで、建設的な議論につなげることができます。

どちらを目指すべきか

適性による判断基準 ゲームディレクターに向いている人は、ゲーム制作に直接携わりたい、クリエイティブな作業に没頭したい、チームをまとめるリーダーシップがある人です。自分だけでなく他人のモチベーション管理が苦ではない人も適性があります。

ゲームプロデューサーに向いている人は、予算やスケジュールの管理が得意、責任感のある仕事にやりがいを感じる、ビジネス的な視点でゲームを捉えることができる人です。また、多様なステークホルダーとの調整や交渉を楽しめる人にも適しています。

それぞれのキャリア形成の特徴 ゲームディレクターのキャリアパスは、通常ゲームプランナーやゲームデザイナー、ゲームプログラマーなどの現場経験から始まります。現場での実務経験を積み、徐々にマネジメント業務を担当するようになり、最終的にディレクターポジションに昇進するのが一般的です。

ゲームプロデューサーは、ゲーム制作関連業務の最上位の職種のため、未経験でなることは難しくゲームディレクターとして制作経験を積んだうえでゲームプロデューサーにキャリアアップすることが一般的です。ゲームディレクターやゲームプランナーとして経験を積んだのち、アシスタントプロデューサーなどをへて、ゲームプロデューサーになるケースがほとんどです。

まとめ

ゲームディレクターとゲームプロデューサーは、どちらもゲーム開発において欠かせない重要な役割を担っています。ディレクターは「作品の品質が高まるよう開発現場を監督する」役割を、プロデューサーは「いかに利益を生み出せるかビジネス的な側面を監督する」役割を担っています。

どちらの道を選ぶかは、自分がゲーム開発のどの側面により魅力を感じるか、どのようなスキルを活かしたいかによって決まります。クリエイティブな現場で直接ゲーム制作に関わりたい人はディレクターを、ビジネス的な視点からプロジェクト全体を統括したい人はプロデューサーを目指すとよいでしょう。

重要なのは、どちらの職種も長期的なキャリア形成が必要であり、まずは現場での実務経験を積むことから始まるということです。ゲーム業界での成功には、継続的な学習と経験の蓄積が不可欠です。