プレイヤーを惹きつけるキャラクター、歩き回りたくなる世界、気持ちよく反応するエフェクト。
それらを“遊べる形”に落とし込むのがゲームCGデザイナーです。この記事では、主な担当領域、ゲーム特有の前提、必要スキル/ツールポートフォリオの作り方、そして将来のキャリアまでを実務目線で整理します。

ゲームCGデザイナーの仕事内容とは?

ゲームのCGは、見た目の美しさだけでは成立しません。リアルタイムに動くこと制約下で最適化されていること他職能と噛み合うことが前提です。採用評価で重視されやすい主要領域を分けて紹介します。

キャラクターモデリング:命を吹き込む造形

プレイヤーキャラクターや敵、NPCを3Dで制作。形状だけでなく、設定・性格・物語が造形や質感ににじむよう、シルエット、プロポーション、二次曲面の管理まで詰めます。アニメーションや衣装物理、スキニングの前提を踏まえたトポロジ設計が評価ポイントです。

環境(背景)モデリング:世界観を支える舞台設計

街・自然・ダンジョンなどの空間全体をデザイン。ナビメッシュやコリジョン、ライトマップ密度、モジュール化といったゲーム特有の要件を踏まえ、負荷と表現のバランスを取ります。レベルデザインと連携し、導線や視線誘導を美術面から補強します。

UI/UX(HUD・アイコン・フィードバック)

メニューやHUD、ピクトグラム、状態変化の視覚/触覚フィードバックを設計。読みやすさ(コントラスト/サイズ/余白)と操作フローの明快さ、入力遅延下でも誤読しない情報設計が鍵。アクセシビリティ配慮(色覚多様性など)も評価対象です。

VFX(パーティクル・ポストエフェクト)

魔法・爆発・天候・被弾表現などをリアルタイムで演出。パーティクル、マテリアル、ポストプロセス、時間軸の設計で操作感を増幅します。描画コスト(オーバードロー/ドローコール)や可視距離の管理は必須知識です。

テクスチャリング/ライティング:質感と空気感を作る

PBR前提でアルベド/メタリック/ラフネス/法線などを設計し、素材らしさスケール感を両立。ライティングは可読性の確保(ゲームプレイの視認性)と雰囲気づくりの両立が軸です。トーンマッピングや露出制御、ボリューム表現の理解が活きます.

映画やアニメと何が違う?ゲームCGの前提

リアルタイムレンダリングの制約

映画は“計算済みの再生”、ゲームはその場で描く。フレーム落ちや遅延は体験を直撃するため、見た目・軽さ・応答性を同時に満たす設計が求められます。

データ最適化(LOD/テクスチャ容量/ドローコールなど)

ターゲット機(PC/コンソール/モバイル)に合わせ、ポリゴン数・テクスチャ解像度・マテリアル数を管理。LOD、インスタンス化、アトラス化、ライトベイク等で安定動作を狙います。

他職能との連携

ゲームデザイナーとはゲーム性と視覚誘導、プログラマーとは技術的制約と描画負荷、アニメーターとは動きと映えの両立をすり合わせます。仕様変更に強いプロシージャル思考も武器になります。

必要スキルと使用ツール(最短で“見せられる”状態へ)

  • 基礎造形力:解剖・比率・量感・エッジ処理。ラフ→ブロックアウト→ディテールの段階設計。
  • DCC & スカルプト:Blender/Maya、ZBrush など。目的に応じたハイ→ローの行き来。
  • テクスチャ/マテリアル:Substance 3D(Painter/Designer)、PBR、マテリアル関数の把握。
  • ゲームエンジンUnreal Engine / Unity。インポート設定、ライト/ポスト、プロファイラでの計測。
  • 最適化の素養:UV/ライトマップ、頂点数/描画回数、オーバードロー、アセット管理。
  • ワークフロー:バージョン管理(Git等)、命名規則、参照管理、チームレビュー。
  • プラスα:ブループリント/シェーダグラフ、Python等の軽い自動化は現場で重宝します。

ポートフォリオの作り方(採用が見るチェックポイント)

作品構成と幅

キャラクター2点+環境2点を目安に、等身/スタイライズ、屋内/屋外などを見せる。VFX/UIは1点でも強い個性を出せます。

ブレイクダウンの提示

ハイポリ→ローポリ、トライ数、UVレイアウト、ベイク結果、マテリアル構成、ワイヤーフレーム、テクスチャ解像度/枚数を明記。どこでコストを節約し、どこに配分したかが伝わると強いです。

エンジン内の“動く証明”

エンジン内スクリーンショットや短尺動画で実機見えを提示。LOD・影・反射・ポストの設定や、可視距離/ライトマップ密度など負荷への配慮も一言添えます。

制作プロセスと権利表記

制作期間、参考資料の出所、担当範囲(個人/共同)、使用ツールを明記。二次創作は権利に配慮し、オリジナル課題を1本入れると評価が安定します。

関連記事:テクニカルアーティストの仕事内容とキャリアパス(パイプライン改善・最適化志向の方に)

あなたはどこを目指す?CGデザイナーのキャリアパス3つの道

① スペシャリスト

キャラクター/環境/VFXなど得意領域を極め、品質基準の更新で価値を出す道。研究開発寄りの検証や、リファレンス精読/再解釈の継続が武器になります。

② マネジメント(リード/アートディレクター)

ビジュアルの方向性、レビュー体制、スケジュール/外注管理を担う役割。再現性のある基準化チームの生産性で成果を出します。

③ 新領域への挑戦(TA/ゲームデザイナー/映像・XR/フリーランス)

パイプライン改善に寄与するテクニカルアーティスト、企画へ踏み出すゲームデザイナー、映像・VR/ARへの展開、フリーランス独立など。現行スキルを価値に変換する設計が鍵です。

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まとめ

ゲームCGデザイナーは、感性論理の両輪で体験を形にする仕事です。
まずは得意領域を決め、必要スキルとツールを“動く前提”で磨き、エンジン内の見えブレイクダウンが整ったポートフォリオを用意しましょう。
その先は、スペシャリストを突き詰めるか、チームを束ねるか、テクニカルや他領域へ広げるか。今の強みと興味に合わせて、一歩ずつ選べます。