はじめに

ゲーム業界の急速な成長と働き方の多様化により、フリーランスとして活動するゲーム開発者が増加している。一方で、同じスキルを持つ開発者でも収入に大きな格差が生まれているのが現実だ。月収30万円前後の案件がある一方、月収100万円超の案件も珍しくない。こうした差は、単純な技術力だけでなく、戦略的なキャリア構築や営業・交渉の設計に起因している。本記事では最新の相場データを参照しつつ、フリーランスゲーム開発者の収入実態を分析し、単価アップの具体策を提示する。
出典:エン・ジャパン「【2025年4月】フリーランス市場月額単価の動向」:https://corp.en-japan.com/newsrelease/2025/41526.html

直近3件の案件における単価・役割・成果を整理し、現状の市場における自分の位置を把握しておくことが望ましい。

フリーランスゲーム開発者の収入実態

職種別平均単価データ

フリーランスのゲーム領域は職種によって相場が異なる。プログラマー(Unity/Unreal Engine等)は、公開相場で平均は約63〜71万円(ゲーム開発カテゴリ約63万円、Unity71.4万円、Unreal Engine約68万円)で、上位帯では90〜100万円超の提示も見られる。
デザイナーは60〜70万円台が中心。プランナーはエンジニアよりやや低めのレンジで推移する。
出典:レバテックフリーランス(ゲーム開発カテゴリの平均):https://freelance.levtech.jp/project/job-24/
出典:フリーランススタート(Unityの平均単価):https://freelance-start.com/jobs/skill-13
出典:レバテックフリーランス(Unreal Engineの平均単価):https://freelance.levtech.jp/project/gme-9/p8/

想定される相場帯を確認した上で、不足しているスキル領域を一つ明確化し、計画的に補完していくことが有効である。

経験年数と地域による収入差

経験年数では、1〜3年で30〜60万円、中堅層で50〜80万円、上級では80万円超の事例も見られる。
地域差も無視できず、案件データ集計では東京都の平均約72.9万円に対し、福岡県は約63.1万円と差が出ている。リモートの普及後も、首都圏案件との接点を持つことは単価形成上の優位になりやすい。

出典:エンジニアスタイル東京「経験年数ごとの単価相場(1〜3年:30〜60万円)」:https://engineer-style.jp/articles/11771
出典:レバテックフリーランス「地域別の単価相場(東京都72.9万円/福岡県63.1万円)」:https://freelance.levtech.jp/guide/detail/1676/

首都圏案件に接触し、提示される条件を比較検討することで、自身の提示額の妥当性を実地で確認できる。

案件規模による単価の違い

インディー寄りの小規模案件は30〜60万円の募集もある一方、コンシューマーや有名IP・大規模モバイルの開発では80〜100万円超の提示が増える。Unity/Unreal Engineでの大型案件例として90万円前後の公開事例がある。
出典:インディバース「ゲーム系フリーランスの単価相場の解説」:https://freelance.indieverse.co.jp/media/freelance/game-freelance
出典:appstars「Unity/C# 大型IPゲーム開発(〜90万円)」:https://www.appstars.io/column/detail/unity-job/

大規模案件の要件を抽出し、それに対応可能であることを示す作例をポートフォリオに反映させておくと効果的である。

収入に影響する要因分析

スキルセットの重要性

高収入を実現している開発者に共通するのは、幅広いスキルセットと特定分野での深い専門性の両立だ。たとえばUnity/Unreal Engineに加えてサーバー実装やCI/CD、パフォーマンス最適化まで担える人材は、クライアントにとって価値が高い。加えて、“作るだけ”から“運用まで見通す”T字型スキルへ踏み込むほど、商談での単価根拠を具体(クラッシュ率低減・ビルド時間短縮など)に語りやすくなる。市場シグナルとしては、Rustの平均単価が連続上昇、SREは平均92.4万円といったデータがあり、近代的開発プロセスや運用の素養が評価に直結している。

出典:エン・ジャパン「2025年7月度 フリーランスエンジニア月額平均単価74.7万円(Rustが3ヵ月連続上昇)」:https://corp.en-japan.com/newsrelease/2025/42699.html
出典:フリーランススタート「【2025年版】SRE 案件フリーランスの単価・案件動向(平均92.4万円)」:https://freelance-start.com/articles/1184

CI/CDを含む最小限の運用体制を自ら構築し、開発から運用までを一貫して担える姿勢を示すことが望ましい。

ポートフォリオの質

技術があっても伝わる可視化がなければ単価は伸びにくい。GitHubのREADME・コード整備、UI/UXなら意図・工程・成果まで示す構成が効果的。ゲーム系ではテイストの描き分け・世界観の説明・検証ログが差別化になる。

各プロジェクトを1ページ単位で整理し、担当範囲・技術スタック・成果を明示した資料を整備しておくことが推奨される。

ネットワークと営業力

SNS・ブログ発信、勉強会参加、コミュニティでの貢献は紹介・指名に直結する。業界内での評判や推薦により、公開されていない高単価案件にアクセスできることが多い。複数チャネル(エージェント/直営業/SNS/人脈)を組み合わせるのが定番の勝ち筋なため、自身の価値を適切に伝える営業力も必須スキルとなっている。

SNSや業界イベントでの発信や参加を通じ、専門性を可視化し、接点を拡大していくことが有効である。

単価アップの具体的戦略

スキル向上戦略

単価アップを実現するには、戦略的なスキル向上が不可欠だ。まず、現在のメイン技術を深く習得しつつ、隣接する技術領域にも手を広げることが重要である。
Unity開発者なら、C#の高度な機能やパフォーマンス最適化技術を習得し、同時にサーバーサイドやインフラ知識も身につける。Unreal Engineの習得も検討すべきだろう。デザイナーなら、単純な2Dグラフィック制作だけでなく、3Dモデリング、アニメーション、シェーダー開発まで対応範囲を広げることで差別化を図れる。
最新技術への対応も重要だ。AI・機械学習を活用したゲーム開発、AR/VR技術、ブロックチェーンゲーム開発など、新しい技術分野での実績を積むことで、希少性の高い開発者として高単価を実現できる。

ポートフォリオ強化戦略

技術力があっても、それを効果的に伝えられなければ意味がない。GitHubでのコード公開は必須で、クリーンなコード、適切なコメント、包括的なREADMEファイルを心がける。個人制作のゲームを定期的にリリースし、技術的なチャレンジと完成度の高さをアピールする。
GitHubや技術ブログでは課題→解法→結果をワンセットで。ゲームはデモ動画/最適化前後の比較/失敗と学びまで見せると刺さる。案件ごとに見せ方を差し替える準備も有効。1プロジェクト=1ページ完結(要約、担当範囲、技術スタック、スクショ or 30秒デモ)を基本にすると読み手が判断しやすい。
最新技術は「対応できる」だけでなく、小さな検証の成果を可視化して載せることが重要だ。たとえばFPS・ロード時間・クラッシュ率などのBefore→Afterを添えると、希少スキルの価値が商談で具体に伝わる。

応募先に応じて提示する作例の順序を調整し、重点的に評価されやすい成果から提示するよう構成を見直すべきである。

営業・マーケティング戦略

優れた技術力を持っていても、それを必要とする人に届かなければ宝の持ち腐れだ。SNSを活用し、技術的な投稿や業界の考察を発信する。ハッシュタグを効果的に使い、関連する開発者やクライアントとの接点を作る。
SNSで検証結果・小さなナレッジを発信し、勉強会・登壇で露出を増やす。コミュニティでは質問回答・PRの提供など継続的な貢献で信頼を積み上げる。
オンラインコミュニティでの活動も見逃せない。DiscordやSlackのゲーム開発コミュニティで有益な情報を共有し、質問に答えることで、信頼できる専門家としての評判を築ける。

勉強会やコミュニティ活動において発信や質問を行い、継続的に露出と信頼を積み重ねることが推奨される。

価格交渉テクニック

交渉では、成果の数値化(例:描画負荷30%改善、クラッシュ率50%低減)と対応範囲の拡張案(運用・最適化も担当)で、値上げの正当性を明確にする。更新タイミングでの提示や、3〜6ヶ月の長期契約提案も有効。併せて時給換算・目標年収からの逆算で妥当線を用意しておく。
結果に応じた成果報酬の導入も検討価値がある。基本単価は抑えめに設定し、プロジェクトの成功指標(リリース日の厳守、品質目標の達成、パフォーマンス向上など)に応じたボーナスを設定する。

交渉の事前準備として、改善実績を数値で整理し、値上げを正当化できる資料を用意しておくことが重要である。

成功事例と失敗パターン

単価アップに成功した開発者の共通点は、技術力の向上と並行して、自己ブランディングと営業活動に継続的に取り組んでいることだ。また、単一の技術に依存せず、複数の技術領域で価値を提供できる「T字型スキル」を構築している。
一方、失敗パターンとして多いのは、技術力の向上のみに注力し、営業活動やセルフブランディングを疎かにするケースだ。また、価格交渉を避けて現状維持に甘んじたり、スキルアップを怠って市場価値が下がったりするケースも見られる。

情報発信や交渉準備を定期的に実行し、習慣化することで持続的な単価上昇につながる。

まとめ・今日から始めるアクションプラン

フリーランスゲーム開発者として高収入を実現するには、技術力・営業力・ブランディングの三要素をバランスよく伸ばすことが重要だ。まずは現在のスキルセットを棚卸しし、市場価値の高い領域で小さく実績化。次に、GitHubやSNSでのプロセス可視化を始める。そして、更新月には数値で語る価値提案を準備して単価交渉に臨む。継続的な実装と発信が、着実な単価上昇につながる。
努力を続けることで収入アップに着実に近づけるはずだ。

――棚卸し、可視化、応募、交渉準備の4工程を小規模に繰り返し、改善サイクルを確立することが望ましい。

※記載の単価・統計は調査時の公開値に基づきます。最新の募集条件と併せてご判断ください。