30代未経験でも、入れる入口はいくつかあります。まずは「使える雛形」と「前後比較で語れる記録」を作る——この順番なら、書類と面接での伝わり方は着実に変わります。
あなたの現在地を決める(技術志向/ビジネス志向)
入口を早く絞るほど、練習の的が定まります。ここでは“今の得意”から仮決めします。迷ったら、続けやすいほうを選んでください。
自己診断表
質問 | はい | いいえ |
---|---|---|
コードや設定ファイルに抵抗がない | 技術志向:QA/テストから始めて自動化に寄せる | ビジネス志向へ |
ドキュメント整備やタスク整理が得意 | PMアシ/進行に寄せる | 他の強みに寄せる |
生活者目線で「不便」を言語化できる | コミュニティ運営・CSが向く | 別の接点を探す |
対外折衝や企画提案の経験がある | アライアンス/運営に活きる | 内部調整系へ |
まず仮決め。次章で、職種ごとの勝ち筋を確認します。
30代が選びやすい入口職種(職種別の勝ち筋)
QA/テスト(再現性×成果可視化が速い)
仕様の読み取り、手順化、記録の丁寧さがそのまま評価に直結します。最初は手動テストで不具合の再現性と報告品質を固め、次にテスト観点の棚卸し→回帰項目の定義へ。小さな自動化スクリプトを育てると、担当範囲が自然に広がります。再現性・観点・回帰の三点が整うと、成果の伝え方に一貫性が出ます。
コミュニティ運営・CS(顧客接点×データ運用)
問い合わせやSNSの声をテーマ別に分類し、改善提案を定例で共有します。オンボーディングの見直しやFAQ更新のような“すぐ効く改善”を積み上げると、運営やマーケとの連携が進みます。分類→改善→共有のリズムを作ると、周囲の動きが合わせやすくなります。
PMアシスタント・進行(調整×言語化)
進行表・議事・依頼文の一貫したフォーマットを用意し、合意の経路を明確にします。スケジュール遅延の兆候を早めに拾い、影響範囲と代替案を並べて伝える。形式を決めるだけで、調整が“意見”から“運用”に変わります。30代の社会人経験が効きやすい入口です。
アライアンス/運営(対外折衝×KPI)
案件整理・契約管理・レポーティングの地道さが効きます。小さなキャンペーンの設計→実施→振り返りを回し、目標指標の前後比較で改善の筋道を示すと、任される範囲が広がります。小規模でもよいので、前後比較の数字を一つ持ち帰ると話が具体になります。
転用パターン一覧(前職→入口職種→初期KPIの例)
下の表は「前職の強み→最初の入口→まず追う数字」を一目で合わせるためのものです。KPIは少なく、定義ははっきりと。
前職の強み | 推奨入口 | 初期に追う指標例 |
---|---|---|
営業/渉外の経験 | アライアンス/運営 | 企画本数、提案採択率、施策前後のCV変化 |
コールセンター/CS | コミュニティ運営・CS | 問合せ分類精度、一次解決率、FAQ更新頻度 |
事務/アシスタント | PMアシ/進行 | 議事の即日化件数、遅延検知の報告数、依頼回答SLA |
Web制作/軽いコーディング | QA/テスト(自動化の素地) | 回帰観点の整備数、再現手順の再現率、簡易自動化の導入数 |
マーケ/広告運用 | 運営(イベント・施策) | 施策実施数、オンボード完了率、施策ごとの前後比較 |
まずは一つを選び、その指標だけを追ってみてください。
進め方の目安
人によって進む速さは違います。やることは三つだけ——土台を作る/小さく試す/外に出す準備を整える。
土台を作る
- QA/テスト:回帰観点(10〜20項目)と再現手順のテンプレを用意する
- コミュニティ運営・CS:問い合わせ分類表とFAQの差分メモを作る
- PMアシ/進行:議事フォーマットと依頼テンプレを揃える
- アライアンス/運営:小規模施策の設計メモを1枚まとめる
ここまで:他の人がそのまま使える雛形が一つあればOK。
小さく試す
- 用意した雛形を自作のサンプルに当て、前→後の変化を短く記録する
- 例:QA=観点追加で検出数や再現率がどう変わったか/運営=施策前後の参加数や完了率
ここまで:比較の記録が二つあれば十分。
外に出す準備を整える
- 成果物を一箇所(Notion/GitHub/Slides など)にまとめ、更新履歴が見える状態にする
- 3分で話せる要点メモ(判断→実行→結果→学び)を数本用意する
ここから:応募と更新を並行し、振り返りで雛形を磨く。
FAQ
Q. 応募対象が広すぎて絞れません。どう決めればいい?
A. 入口を一つに絞るのが近道です。ほかの候補は「次の候補」としてメモに退避。合否の振り返りが明確になり、学習の焦点がぶれにくくなります。
Q. 作品が完成してから公開したいのですが、途中公開は不利ですか?
A. 途中でも公開して問題ありません。更新履歴が評価されやすく、成長の筋道を示せます。
Q. 年収だけで迷ってしまいます。判断の軸は?
A. 近い将来に伸ばせる環境を先に確認してください(レビュー頻度、メンターの有無、学習時間の確保など)。金額は後からついてくることが多いです。
Q. 面接で経験がうまくまとまりません。
A. 前後比較+自分の判断の二点で短く語ります。例:「問い合わせ分類を見直し、一次解決率が上がった/なぜそう判断したか」。
Q. 自習が続きません。
A. 曜日と時間を固定し、やることを一つに絞ります。小さく続くことが最優先です。
Q. 未経験でポートフォリオに何を置けばいい?
A. 社内でそのまま使える書式が有効です。回帰観点、議事テンプレ、提案書の雛形などが通過点になります。
Q. 学習と応募、どちらを先に?
A. 並行が基本です。公開→更新→応募の循環を小さく回すと、定着します。
まとめ
30代未経験の転職で大切なのは、速さよりも軸です。入り口を一つ決め、誰かがそのまま使える雛形を一つ作り、前後の変化を短く残す。これだけで書類と面接の会話は具体になり、次の打ち手が見えてきます。
ペースは人それぞれ。止まったら雛形に戻って定義を整えれば十分です。完璧さより更新の継続。小さく進む手応えが積み上がれば、選択肢は自然に広がります。