UIとUXの役割が曖昧で、面接や選考で何をそろえれば評価されるのか迷うときは、まず評価の土台になる要素から整えるのが早道です。ここでは、ゲーム開発の現場で確かに効く“見せ方・作り方・伝え方”にしぼって要点をまとめます。

まず揃える三つ

最初に「何を見られるか」を決めておくと、準備の無駄が減ります。次の三つを一式で提示できると評価が安定します。

  1. 画面設計の一貫性:情報の優先度、視線誘導、レイアウト規律。
  2. 検証ログ:ワイヤー→触れるプロトタイプ→改善の痕跡(動画・比較キャプチャ・短文メモ)。
  3. 実装再現:Unity/Unreal Engine で意図通りに動くことを示すメモ(解像度・入力・アンカー等)。

役割と仕事範囲(UIとUXの重なり)

UIは画面・コンポーネントの設計と見た目、UXは目標達成までの行動設計(状態遷移・入力・フィードバック)です。現場では両者が重なります。評価されるのは、ビジュアルとフローが同じ意図で設計され、検証によって“迷いが消えていく”過程まで提示できることです。

ワークフロー:設計→検証→改善(触れる仕様を早く作る)

設計では、ユーザーの目的と前提を言語化し、必要最小限の要素に絞ったワイヤーを作ります。検証では、クリックや入力まで触れるプロトタイプを用意し、視線の迷い・入力の詰まり・読み飛ばしを観察します。改善では、課題→対応→再検証を短いサイクルで回し、比較キャプチャと短い動画、変更理由のメモを残します。ドキュメントの量より、変化の証拠が説得力になります。

必須スキルの四本柱

情報設計とレイアウト

目的・前提・優先度を先に決め、要素を“減らす設計”で迷いを削ります。文字密度・余白・整列を揃え、通知・エラー・ロードといった動的要素まで想定します。

プロトタイピングとインタラクション

早い段階で“触れる状態”を作り、反応速度・入力遅延・焦点移動・戻り経路を確かめます。成功/失敗のフィードバックや誤操作の防止など、体感の粗さを前倒しで潰します。

リサーチとユーザビリティテスト

小規模でも高頻度で観察し、発話と操作のズレを拾います。固定化した理想像ではなく、実際のプレイ目標に合わせてタスクを組み、改善と再検証を繰り返します。

ビジュアル表現と資産運用

コンポーネントの状態(通常/押下/無効)とトークン(色・間隔・角丸)を定義し、書き出しと命名を実装前提で統一します。差し替えやすさは、後工程の速度へ直結します。

ポートフォリオの見せ方(意図・検証・再現)

作品数は絞って構いません。各作で「課題と制約」「ワイヤー→プロトタイプの比較」「観察メモ」「改善前後の動画」を一枚ずつ添えます。既存IP風にまとめる場合は、権利と禁止表現への配慮を明記します。Unity/Unreal Engine での再現メモ(アンカー、スケール、入力、フォント)を短く添えると、“動く前提”での設計力が伝わります。

実装連携の勘所(Unity/Unreal Engine)

解像度とスケール

最初に基準解像度と安全領域を決め、参照スケールをチームで共有します。比率が変わっても欠けや潰れが出ないかを代表的な解像度で目視確認し、アンカーとレイアウト規則を先に固めます。

入力とフォーカス

入力デバイスごとに「到達できる」「戻れる」「見える」を確認します。タッチ・マウス・コントローラーでフォーカスの移動先が直感に合っているか、決定/キャンセルの方向性がプラットフォーム方針と一致しているかを合わせます。

状態管理(ロード/エラー/オフライン)

成功だけでなく「待ち・失敗・復帰」を画面設計に含めます。ロード中の表現、再試行の導線、通信断やサーバ保守時の扱いを先に決め、モックに反映してから実装に渡します。

パフォーマンス

見た目の要件を言語化してから効果を選びます。影やブラーなどコストの高い処理は置き換え案を検討し、長いリストは再利用や非表示化で描画を軽くします。スクロールの手触りは早い段階で触って確認します。

資産の受け渡し

命名と書き出し仕様を事前に決め、差し替え手順と影響範囲を短くまとめます。どのファイルを更新するとどこが変わるかを明示しておくと、実装側の作業が止まりません。

―― 最低限の成果物としては、代表解像度のスクリーンショット一式、入力マップとフォーカス遷移の簡易図、ロード/エラー/オフラインを含む短いモック動画があると連携がスムーズです。

よくある失敗と回避策

失敗は技術不足より、合意と検証の欠落から生まれやすい。

  • ワイヤーを共有しない → 早期レビューの場を固定し、合意した状態を残す。
  • 検証を省く → 触れるプロトタイプで遅延や長文など擬似本番条件を再現。
  • 情報過多のHUD → まず要素を減らし、残す情報を段階開示と階層で整理。
  • 装飾優先で一貫性が崩れる → トークンとコンポーネントの辞書を維持。

キャリアステップ(できること基準で見る)

レベルできること(例)
ジュニアガイドに沿って画面を組み、小さな改善を再現できる
ミッド画面群を自走設計し、触れるプロトタイプで検証→反映
シニア体験全体の整合を取り、他職能を巻き込んで改善を主導
リード品質基準と設計プロセスを定義し、チームを育成
マネージャーロードマップとKPIで体験改善を継続管理

ケーススタディ

一般化すると、設計段階からUI/UXが入り、触れるプロトタイプで早めに“仕様を体験化”します。レビューは動画・比較静止画・短文で回し、入力・解像度・エラー時の状態を先に潰します。結果として、往復回数と認識の齟齬が減り、改善の速度が上がります。
参考として、国内大手では開発ツールやワークフローにUX視点を早期から組み込む取り組みが公開されています。
出典:https://www.docswell.com/s/CAPCOM_RandD/K7V3MN-RE2023

FAQ

  • 未経験でも応募できる?
    可能です。小さく作ったプロトタイプと検証ログを軸に、課題設定から改善までの筋道を示しましょう。
  • 学習の順番は?
    情報設計→ワイヤー→触れるプロトタイプ→観察→改善。基礎ができたら実装連携の勘所へ。
  • ツールは何が必要?
    ワイヤー/プロトタイピングに加え、最終的に Unity/Unreal Engine で再現できること。
  • UIとUXはどちらを強調すべき?
    作品によります。少なくとも一貫した設計意図と改善の過程を明確にしてください。
  • 作品はどこに出す?
    自サイトやポートフォリオサービスに、動画・比較画像・短文の検証ログを添えて掲載します。

まとめ

きれいな画面は必要条件にすぎません。評価の分かれ目は、設計→検証→改善→実装がひと続きの筋で説明できるかどうかです。
プロジェクトごとに正解は違うので、成果物そのものより「なぜそう判断したか」「直して何が変わったか」を同じ流れの中で示せることが大切です。迷うときは対象を一つに絞り、ワイヤー→触れるモック→改善前後の比較に加えて、Unity/Unreal Engine での再現メモを並べた“ひとかたまりの記録”だけで十分。これが揃うと、面接でも現場でも、意図と結果が無理なく伝わります。