「翻訳ミスで炎上し、半年のプロモーションが一晩で水泡に帰す」──たった1語の選択が世界同時リリースの命運を左右します。
単なる文字置き換えではなく、文化・法律・宗教・生活習慣まで汲み取る カルチャライズ(文化適合化) と、実装後の表現崩れを洗い出す LQA(Linguistic Quality Assurance)。どちらか一歩でも抜ければ海外ユーザーの評価は急落し、売上機会を失いかねません。

実際、固有名詞を直訳したために炎上した例は枚挙にいとまがありません。一方『メトロイドプライム』の “スキャン翻訳” のように、ゲーム性と世界観を両立させた高品質ローカライズは海外メディアから絶賛され、Metacritic スコア向上にも寄与しました。
ゲームローカライズサービス市場は 2024 年時点で約 13 億ドル、2031 年には約 21 億ドルへ拡大すると予測されています[^1]。語学力+ゲーム知識+QA スキル を掛け合わせた“替えの利かない人材”に対して、企業の争奪戦は激化する一方です。

本記事では、次の4本柱で ゲームローカライズ/LQA職への最短転職ルート を解説します。

  1. 仕事の全体像|翻訳・カルチャライズ・LQA の具体的フロー
  2. 必要スキル|CAT ツール活用から多文化チーム協業まで
  3. キャリアパスと年収相場|翻訳者からローカライズ PM、グローバルプロデューサーへの道
  4. 未経験者の採用戦略|翻訳サンプル・模擬バグ票・コミュニティ翻訳で実績を可視化

海外ユーザーの感情に寄り添い、数字で品質を語れるローカライズ人材になるためのロードマップを、未経験者でも理解しやすい具体例と KPI を交えてお届けします。

[^1]: Verified Market Research, “Game Localization Services Market Size, Share, Trends & Forecast”https://www.verifiedmarketresearch.com/product/game-localization-services-market/


仕事の全体像──翻訳・カルチャライズ・LQA を回す4ステップ

ゲームローカライズの現場は「翻訳して終わり」ではありません。
原語データの抽出からリリースビルドの品質保証まで、言語とコードの両面にまたがる工程をシームレスに回します。ここでは ゲームローカライズ 仕事内容/LQA 仕事内容 を4ステップで俯瞰します。

  1. 翻訳原稿の作成(CAT ツール運用)
    開発ビルドからテキスト・UI ラベル・ボイススクリプトを抽出し、Memsource・Phrase TMS・Trados などの CAT ツールで多言語化。タグ管理と用語ベースを統一し、後工程のバグ発生率を抑えます。
  2. カルチャライズ(文化・法規制対応)
    国別レーティングや宗教的禁忌をチェックし、直訳ではなく “物語として自然に読める” 表現へ最適化。必要に応じてシナリオライターと協議し、ストーリー構造そのものの修正提案まで行うこともあります。
  3. LQA:機能・言語テスト(バグ票作成)
    ローカライズ済みビルドを実機プレイし、誤字脱字・テキスト溢れ・口パク不一致を検出。バグ票 書き方 LQA の定番フォーマット(再現手順+スクリーンショット+推奨訳)で JIRA/Backlog に登録し、エンジニアや UI デザイナーへ修正を依頼します。
  4. 実装確認&反復テスト
    修正反映を再確認し、必要に応じて Step 3 を繰り返して “ゼロクレーム” を目指します。並行して各言語のスタイルガイドを更新し、次回アップデートの作業コストを圧縮します。

プロジェクト全体を支えるマネジメント業務

  • 外部ベンダー/フリーランス翻訳者の進行管理
    納期と品質を両立させるため、CAT の進捗レポートをダッシュボード化し、日次でボトルネックを可視化。
  • リリースカレンダーとの同期
    マーケティング施策と連動させ、言語版ビルドのデッドラインを逆算。LiveOps 施策に合わせた “翌週 24 時間翻訳” にも即応します。

ローカライズ PM や LQA リードに求められるのは「翻訳精度」だけではなく、多文化チームを束ねるマネジメント力と、品質を数値で語るレポーティング力 です。


必要スキル──“語学”と“テクノロジー”を掛け合わせる

ゲームローカライズ/LQA の現場では、「翻訳がうまい」だけでは評価されません。
翻訳精度を担保するツール運用から、開発チームと渡り合う技術知識、そして多文化環境で衝突を防ぐソフトスキルまで──4領域をバランスよく伸ばすことが ゲームローカライズ なるには の最短ルートです。

1. 語学力:精度とニュアンスの両立

  • 母語レベルの日本語ライティング + ビジネス英語は必須
  • 中国語・韓国語・フランス語など追加言語があれば ゲームローカライズ 求人 で選択肢が大幅に増加
  • 直訳では拾えないニュアンスを汲み取り、カルチャライズ ゲーム へ落とし込む力が差別化ポイント

2. ツールスキル:CAT とバグ管理の即戦力

ツール習得理由・キーワード例
Memsource / Phrase TMS / Tradosゲーム翻訳 ツール CAT の定番。タグ管理・用語ベース運用を効率化
JIRA / Backlogバグ票 書き方 LQA をチーム標準で共有し、修正漏れをゼロへ
GitHubJSON/XML の差分確認や コミットレビュー に参加し、開発スピードを維持

3. 技術知識:開発フローに溶け込む“言語エンジニア”視点

  • JSON・XML・CSV など、ゲーム特有のテキスト格納形式を理解
  • Python/JavaScript で「文字数制限チェック」や「自動スタイルガイド検証」スクリプトを作成
  • Phrase TMS ゲーム翻訳 API を叩いて翻訳メモリを一括更新できると、LQA 回数を大幅に削減

4. ソフトスキル:多文化チームを滑らかに動かす

  • 文化差異への高い感度と、言い換え提案を裏付ける ドキュメンテーション力
  • Slack/Discord/Notion を用いたリモート協業で、タイムゾーンを超えた意思疎通を円滑化
  • スタイルガイドを維持管理し、表現ゆれを最小化して 再翻訳コストを削減

次世代コンソールの可変 UI では「文字数が1文字オーバーしただけでテキストが切れる」ケースが頻発します。文字数計算スクリプトを自作し、LQA 工数を 30% 圧縮した事例は面接でも強力なアピールになります。

このスキルセットを体系的に伸ばすことで、翻訳者から ローカライズ PM スキル を備える次のキャリアステップへ一歩近づきます。


キャリアパス──翻訳者からグローバルプロデューサーまでのロードマップ

ゲームローカライズ職の昇格イメージは「翻訳精度 × 品質管理 × 事業視点」の3軸でステップアップします。ゲームローカライズ 年収/LQA 年収 の相場感を押さえつつ、目標ポジションで求められるスキルを逆算しましょう。

翻訳者(Translator)|経験 1〜3 年

  • 主要業務:テキスト翻訳/用語集整備
  • 年収目安:260〜400 万円
  • 着目スキル:ゲームローカライズ 仕事内容

LQA リード|経験 3〜5 年

  • 主要業務:バグ票管理/テスター統括
  • 年収目安:450〜550 万円
  • 着目スキル:LQA 仕事内容/LQA 求人

ローカライズ PM|経験 5〜7 年

  • 主要業務:外部ベンダー管理/スケジュール調整
  • 年収目安:550〜830 万円
  • 着目スキル:ローカライズ PM スキル

グローバルプロデューサー|経験 7 年〜

  • 主要業務:事業戦略/海外法人マネジメント
  • 年収目安:900〜1,200 万円
  • 着目スキル:グローバルプロデューサー キャリア

フリーランス相場:ゲーム翻訳は 1 ワード 7〜14 円が目安[^2]。
1 時間 400〜600 ワード換算で 時給 3,000〜6,000 円 程度となり、複数スタジオと並行契約すれば 年収 800〜1,000 万円超 の例も報告されています。


参考・出典一覧

[^2]: note, “これから韓日ゲーム翻訳に参入したい翻訳者さん向けの情報”https://note.com/masa_kei/n/n6e348a48152e

次のポジションへ進むための鍵

  • 翻訳者 → LQA リード
    バグ票 書き方 LQA を標準化し、テスター教育を主導
  • LQA リード → ローカライズ PM
    • 外部翻訳者を束ねて CAT ダッシュボードで進捗可視化
  • PM → グローバルプロデューサー
    • 言語だけでなく収益指標(ARPDAU・留率)を見ながらローンチ戦略を設計

自分が次のフェーズで求められる KPI を把握し、履歴書・ポートフォリオに 成果+数字 を明示することで転職市場での評価が跳ね上がります。


未経験からローカライズ/LQA職に採用される4ステップ

「語学は得意だけどゲーム業界は未経験」という応募者が増える一方で、企業は“即戦力かを 3 つの軸”で判定します。
1) 翻訳精度 2) LQA 対応スピード 3) オンライン協業スキル
この3点を 見える成果物 として提示できれば、書類選考の通過率が跳ね上がります。

1. 翻訳サンプルを公開する

好きなインディーゲームのテキストを 直訳版/カルチャライズ版 の2列で GitHub に公開。

  • コミットコメントに「語調を変えた理由」「レーティング規定への配慮」など判断根拠を書くと差別化できる。
  • “ゲームローカライズ なるには 翻訳サンプル” を検索した採用担当者が見つけやすいよう、README にキーワードを明記。

2. LQA 模擬バグ票を作成する

無料体験版やデモビルドをプレイし、スクリーンショット付きの バグ票(JIRA 形式) を作成。

  • 再現手順・期待結果・推奨訳を1ページにまとめ、LQA 仕事内容 を一気通貫でこなせることを証明。
  • 「バグ票 書き方 LQA」の検索流入で自分のポートフォリオにたどり着く導線にもなる。

3. コミュニティ翻訳に参加する

Steam ワークショップや fan translation プロジェクトで スタッフクレジット入り を狙う。

  • プロジェクト完了後に「Steam 翻訳 コミュニティ」で検索ヒットする実績 URL を取得。
  • Git リポジトリで作業履歴が残るため、CAT での用語統一スキルやレビュー対応スピードも可視化できる。

4. オンライン協業の実績を作る

Slack・Discord・Notion で多国籍チームとやり取りし、時差を超えた進行管理を体験。

  • 週次スタンドアップの議事録を英語でまとめ、ドキュメンテーション力 をアピール。
  • 面接では「リモートでも開発を止めない翻訳者」をキーメッセージに据える。

選考担当者は「翻訳精度 × LQA 対応スピード × コミュニケーション」を掛け算で評価します。4ステップを通じてこの3要素を 数値や URL で証明できる形 に落とし込むことが、未経験採用を突破する最短ルートです。


まとめ──“言語で世界をつなぐ”ゲームキャリアを掴む

ゲームローカライズ/LQA 職は、

  1. 高精度の翻訳で物語を壊さない
  2. カルチャライズと LQA で炎上リスクをゼロに近づける
  3. 売上だけでなくブランド価値を底上げする
    という三重のインパクトをもたらすポジションです。市場規模が 10 年でほぼ倍増する見通しのいまこそ、専門スキルを磨く絶好のタイミングと言えます。

今日から動ける3つのアクション

  1. CAT ツールを触る
    Memsource や Phrase TMS の無料プランで用語ベースとタグ管理を体験する。
  2. LQA フォーマットを写経する
    自分用テンプレートを1枚作り、どんなゲームでもバグ票を切れる状態にしておく。
  3. 翻訳+テストの成果物を公開する
    GitHub で “直訳・意訳比較” と “模擬バグ票” をセットでアップロードし、ポートフォリオの核にする。

数字で品質を語り、文化で感情を動かす──その二刀流を備えたローカライズ人材は、どのスタジオにも“替えの利かない戦力”として迎えられます。次にロールクレジットに載る名前は、あなたかもしれません。