面白いゲームのアイデアが閃いた時、それを実現可能なプロジェクトとさせるための最初の重要なステップが「ゲーム企画書」の作成です。ゲーム開発は多大な時間、費用、そして情熱を注ぎ込む大掛かりな事業であり、その成否は初期段階の計画に大きく左右されます。しっかり練られた企画書は、プロジェクト成功の確率を高めるための確かな土台となるのです。

この記事では、ゲーム企画書とは何か、その基本的な構成要素、そして読み手の心を掴む魅力的な企画書を作成するための具体的な書き方とポイントを解説します。

ゲーム企画書とは? なぜ重要なのか?

ゲーム企画書とは、新たなゲームの開発・提案に向けたアイデアをまとめたドキュメントです。ゲームのコンセプト、ターゲットとするプレイヤー層、主要な機能や遊び方、そして開発計画など、細かい情報を記載します。

ゲーム開発は長期にわたるため、途中で方向性が曖昧になると、開発の遅延やコストの増大といった問題を引き起こしかねません。こうしたリスクを避け、プロジェクトを成功に導くためには、企画の初期段階で明確なビジョンを示し、関係者全員の共通認識を形成する企画書の存在が不可欠です。

ゲーム企画書の基本構成

企画書に絶対的なフォーマットはありませんが、ゲームの全体像と価値を効果的に伝えるために、一般的に含まれる主要な構成要素があります。これらを基本としながら、プロジェクトの性質や提出先に応じて取捨選択や、順序の調整をします。

  1. タイトルページ: ゲームタイトル、作成者、日付など。
  2. 概要(エグゼクティブサマリー): 企画全体の要点を1ページ程度に凝縮。最重要部分。
  3. 企画意図・ビジョン: 「なぜこのゲームを作るのか」という動機と目的。
  4. ゲームコンセプト・USP: 「一言で言うと何が面白いのか」というゲームの核、独自の売り。
  5. ターゲットオーディエンス: 「誰に届けたいのか」というプレイヤー像の具体化。
  6. ゲーム内容・コアメカニクス: 「具体的にどうやって遊ぶのか」というゲームの仕組み。
  7. アートスタイル・世界観: ゲームデザインや雰囲気の方向性。
  8. 技術概要・プラットフォーム: 使用する技術や開発・動作環境。
  9. 競合分析・ポジショニング: 市場における立ち位置と勝算。
  10. ビジネスモデル・収益化: どのように収益を上げるかの計画。
  11. 開発チーム: 「誰が作るのか」というチームの強みや信頼性。
  12. 開発計画・予算: 実現可能性を示すスケジュールと費用感。

主要セクションの具体的な書き方

概要 / エグゼクティブサマリー

企画書の「つかみ」です。読んで全体像と魅力を把握できるよう、ゲームの核心、ターゲット、独自性、可能性などを簡潔かつ魅力的に要約します。ここで興味を引かなければ、続きを読む動機を与えられません。

企画意図 / ビジョン

「なぜ、このゲームを作りたいのか?」という開発の根源的な動機、情熱を伝えます。ただし、個人的な想いだけでなく、市場ニーズや技術的背景といった客観的な根拠と結びつけ、「作るべき理由」として説得力を持たせることが重要です。「このゲームが世に出ることで、どんな良い変化がもたらされるか」というビジョンを示すと、共感を呼びやすくなります。

ゲームコンセプト / USP (Unique Selling Proposition)

「一言で言うと何が面白いのか?」に明確に答えます。このゲームでしか味わえない具体的な面白さ、すなわち独自の体験価値(USP)を定義することが重要です。プレイヤーがどんな新しい体験をするのか、キャッチーな言葉で表現しましょう。企画書全体で、このコンセプトからブレない一貫性が求められます。

ターゲットオーディエンス

誰のためのゲームか、ターゲットを具体的に描きます。年齢・性別だけでなく、価値観、ライフスタイル、ゲームの好みなど、具体的な人物像(ペルソナ)まで掘り下げます。そして、「なぜその人たちがこのゲームを欲しがるのか」を、データなどを用いて論理的に説明します。

ゲーム内容 / コアメカニクス

ゲームの具体的な中身を説明します。プレイヤーが最も時間を費やす中心的な行動(コア・ループ)は何か、その面白さの源泉は何か、ゲームを特徴づける独自のシステムは何か、といった点を中心に、図なども活用しながら分かりやすく伝えます。

アートスタイル / 世界観

グラフィックの雰囲気、キャラクターデザイン、世界観設定、音楽イメージなどを伝えます。参考画像、イラスト、キーワードを用いて、読み手がビジュアルや空気感を具体的にイメージできるよう工夫します。

技術概要 / プラットフォーム

使用するゲームエンジンや主要技術、ターゲットとするプラットフォーム(PS5、Switch、PC、スマホ等)を明記します。選択理由をゲーム性やターゲット層と関連付けて説明できるとベターです。

競合分析 / ポジショニング

市場の類似ゲームを挙げ、それらと比較した上での自ゲームの「強み」と「戦い方(ポジショニング)」を明確にし、根拠を論理的に示します。

ビジネスモデル / 収益化

どのように収益を上げるかの計画は必須です。売り切り、基本無料+課金、広告など、ゲーム性とターゲットに合った戦略とその理由を説明します。

開発チーム

「誰が作るのか」は企画の信頼性を左右します。メンバーの実績や専門性、そして「なぜこのチームなら実現できるのか」という強みをアピールします。

開発計画 / 予算

夢物語で終わらせないために、現実的な開発計画(マイルストーンを設定したスケジュール等)と、それに基づいた必要予算の概算を示します。

魅力的な企画書にするためのポイント

構成要素を埋めるだけでなく、読み手の心を動かし、「伝わる」企画書にするための工夫も非常に重要です。

魅力的な企画書にするためには、いくつかの重要なポイントがあります。まず何よりも、常に読み手の視点に立ち、分かりやすい言葉で簡潔かつ論理的に記述することが求められます。構成やレイアウトにも配慮し、視覚的な理解を助ける工夫も必要です。また、単なる情報の羅列ではなく、企画全体が一つの魅力的なストーリーとして伝わるように構成することも効果的です。ゲームの企画書においては、コンセプトアートやモックアップといった視覚的要素を最大限に活用し、「面白そう!」という直感を刺激することも欠かせません。ただし、その際には「作りたい!」という熱意と、それを裏付ける客観的なデータや計画による実現可能性とのバランスを取ることが、信頼を得る上で重要となります。誤字脱字がないかなど、細部まで気を配り、丁寧な仕上げを心がけましょう。

まとめ

ゲーム企画書は、新たなゲームの開発・提案に向けたアイデアをまとめたドキュメントです。企画書の作成は簡単ではありませんが、常に「誰に何を伝えたいのか」という読み手の視点を大切にしてください。ゲームの核となる面白さを具体的に描き出し、それを客観的なデータや実現可能な計画で裏付けましょう。また、コンセプトアートなどのビジュアルで魅力を補強することも意識し、あなたの素晴らしいアイデアを企画書へと落とし込んでみてください。