近年、ゲーム開発の現場では高機能なゲームエンジンが不可欠となっています。その中でも代表的な存在がUnityとUnreal Engine(以下Unreal)です。
両者は幅広いジャンルのゲーム制作で活用されており、初心者からベテランまで多くの開発者に利用されていますが、実際にどう違うのでしょうか。
本記事ではコーディング言語や特徴、グラフィックス性能の差、アセットストアの充実度、向いているプロジェクト規模などを整理しながら、UnityとUnrealの選び方や使いこなし術について解説します。さらに、実際のプロジェクトで感じる使い勝手や学習コストにも踏み込み、双方を比較検討する際のヒントを提供します。
コーディング言語とエディタの特徴
Unity:C#をベースにした軽快さ
UnityはC#を主言語とし、直感的で扱いやすいエディタが特徴です。
C#はJavaやC++ほど低レベルな管理を必要としない一方、オブジェクト指向やラムダ式なども備えた高機能な言語なので、初心者でも比較的学びやすいとされています。エディタはUnity Hubでプロジェクト管理を行い、インスペクターやヒエラルキーなど視覚的にオブジェクトを配置・設定できるGUIを備えているため、細かな調整やデバッグをしやすい環境が整っています。
Unreal:C++とBluePrintのハイブリッド
一方、UnrealはC++を基盤としながら、BluePrintというビジュアルスクリプティング機能を併用できる点が大きな魅力です。C++はメモリ管理やポインタなど学習ハードルが高い反面、低レベルな制御ができるため高いパフォーマンスを引き出すことが可能です。
またBluePrintではノードを繋ぎ合わせる形でゲームロジックを構築できるため、プログラマーだけでなくデザイナーやアーティストも視覚的にゲームの仕組みを理解・実装しやすいという利点があります。
グラフィックス性能とアセット活用
Unity:軽量かつ拡張性の高い描画
Unityは軽快さが武器で、モバイルゲームなど比較的軽量なプロジェクトにも最適化しやすい傾向があります。HDRP(High Definition Render Pipeline)を使えば、
ハイエンドなビジュアル表現も可能になりましたが、初期設定や最適化のノウハウが求められるため、若干の学習が必要です。とはいえ、幅広いプラットフォームへのビルドが容易なので、「マルチプラットフォームでリリースしたい」「短い開発期間で完成度を上げたい」ケースに向いています。
Unreal:フォトリアルな表現が得意
UnrealはAAA級のタイトルにも用いられる高いグラフィックス性能が特徴で、とくにフォトリアルな描画やハリウッド映画のような映像演出に強みを持ちます。
開発ツールとしてはRay Tracingやアンリアルエディタ5のNanite、Lumenといった先端技術が活用でき、広大なオープンワールドを美しく再現することができます。
その分、扱うデータ量やPCへの負荷も大きくなるため、比較的大規模なプロジェクトを想定した環境と言えるでしょう。
アセットストアとプラグインの充実度
Unity Asset Store
Unityには豊富なアセットストアがあり、キャラクターモデルやUI素材、サウンド、スクリプトテンプレートなど多彩な素材が手頃な価格、あるいは無料で入手できます。開発初期段階でこれらを組み合わせることで、短期間でプロトタイプを構築できるのも魅力の一つです。
またコミュニティが大きいため、有志が制作したプラグインや拡張ツールも数多く存在します。開発途中で発生しがちな課題に対して、すでに用意されたソリューションを活用しやすい点がアドバンテージとなるでしょう。
Unreal Engine Marketplace
UnrealのMarketplaceも年々充実してきており、高品質なアセットやプラグインが増えています。特にリアル系グラフィックスのプロジェクトで重宝するフォトスキャン素材や、BluePrintを利用したゲームプレイテンプレートは完成度が高く、そのまま組み込むだけで本格的なシステムを構築可能です。
ただし全体的に容量が大きいアセットが多いため、高スペックの開発環境が必要になるケースがある点には注意が必要です。
向いているプロジェクト規模とチーム構成
小規模〜中規模:Unityがリード?
個人や数名規模のインディーデベロッパーの場合、Unityは学習コストが比較的低く、資金力が限られた中でも成果を出しやすい環境が整っているといえます。
マルチプラットフォーム対応が容易なので、PC・コンソール・モバイルなど複数デバイスへ短期間で展開したい場合にも有利です。小回りが効きやすく、プログラマー以外のメンバーがエディタ上で作業を行う際も操作感がわかりやすいと評判です。
大規模〜AAA:Unrealの本領発揮
ハイエンドPCや最新コンソール向けのAAAプロジェクトでは、高いグラフィックス性能と柔軟なカスタマイズ性を誇るUnrealが選ばれる傾向にあります。
性能をとことん引き出せるC++を使いこなせるプログラマーがチームにいれば、最先端の表現を追求できるでしょう。またアートチームがBluePrintで試作を繰り返しやすい点も、大きなチームにとってはメリットです。とはいえ、エディタが要求するスペックは高めなので、大規模タイトル向けのリソースやマシン環境を確保する必要があります。
実際のプロジェクトで感じる使い勝手と学習コスト
Unityの使い勝手
- メリット:
- 学習しやすいC#と直感的なUIで初心者にもとっつきやすい
- エディタの起動やコンパイルが比較的軽く、試行錯誤がしやすい
- マルチプラットフォームへのビルドがスムーズ
- デメリット:
- 本格的なフォトリアル表現には細かな最適化が必要
- プロジェクトが巨大化するとエディタの動作が重くなるケースも
Unrealの使い勝手
- メリット:
- フォトリアルで圧倒的に美しいグラフィック表現が可能
- BluePrintを活用すれば非プログラマーでもゲームロジックを構築しやすい
- AAA級タイトルのノウハウが豊富に共有されており、質の高いサンプルも多い
- デメリット:
- C++の学習ハードルが高く、エディタ自体も動作が重い
- 大規模開発向けの設計が前提のため、インディー開発では過剰に感じる場合も
学習コストの観点では、UnityはC#というとっつきやすい言語とエディタのシンプルさから、小規模チームや個人がスピーディに成果を出しやすい傾向があります。
一方、Unrealはハイエンドな機能を使いこなすためにC++の理解が欠かせず、プロジェクトの初期段階でリソースや時間を投下する必要があるでしょう。ただしBluePrintの存在により、プログラム部分をある程度視覚的に扱えるため、アート面やレベルデザインに集中したい場合は却って学習が早いという意見もあります。
まとめ:目的とチーム構成に合わせた選択を
UnityとUnrealはどちらも強力なゲームエンジンであり、世界中のゲーム開発現場を支えています。最終的な選択肢は「プロジェクトの規模」「求めるビジュアル品質」「チームメンバーの得意分野」などによって変わるでしょう。
- 小規模開発や2D/3Dを問わず幅広いジャンルに柔軟対応したい → Unityが有力
- AAAクラスのリアル系表現やビジュアル重視の大規模プロジェクトを狙いたい → Unrealが有力
どちらのエンジンも公式ドキュメントやチュートリアルが充実しており、コミュニティフォーラムやSNSで質問することで多くの知見を得られます。まずは小さなプロジェクトを組んでみて、エンジンの特性やワークフローを肌感覚で試してみると良いでしょう。
自分やチームに合う開発スタイルを見極め、UnityあるいはUnrealの強みを最大限引き出すことが、完成度の高いゲームを作る近道です。