3DCGの制作現場には、モデリング・リギング・アニメーション・エンジン実装など多様な工程があります。近年はメタバース関連など新領域の対応も増え、幅広さと柔軟性が求められます。ここでは、採用現場で評価が分かれるポイントを、実務の視点で要点化します。

1. スペシャリストであるか

工程を広く理解していても、評価を安定させるのは「ひとつの深さ」です。DCCとUnreal EngineUnityの橋渡しができる、日々の反復作業をPythonでツール化できる、といった強みは速度と品質に直結します。自分の得意領域を言葉と作例で示せるかが出発点です。

良い例

  • 得意領域を明示し、担当範囲と再現可能な成果をセットで示す(例:ローポリ最適化→LOD設計→検証手順まで)。
  • エンジン実装とDCCの入出力条件を合わせ、手戻り率の低下や作業時間の短縮を実数で提示できる。

悪い例

  • 「何でもできます」と言いながら到達品質がばらつき、同様のレビュー指摘が反復する。
  • 監修志向のみを語り、手を動かした作例やプロセスの証拠が出てこない。

最初にやるべきは、得意領域を一つ決めて言語化し、前後比較の作例と手順を整えること。再現性が見えるほど、評価は安定します。

2. コミュニケーション・態度の良し悪し

制作は共同作業です。相手や場面に応じて語彙と情報量を切り替え、要点→根拠→結論の順で短く伝えられる人は、仕様すり合わせや見積もり判断が速く進みます。希望条件は伝えつつ、プロジェクト側の前提と折り合いをつける姿勢が信頼につながります。

良い例

  • 部署・職種ごとに必要な粒度で説明し、確認事項を簡潔な議事メモで即時共有できる。
  • 緊張する場面でも論点を切り分け、結論と影響範囲を先に伝えられる。

悪い例

  • ため口や刺さる言い回しが混じる、確認抜けが多い、合意形成を軽視する。
  • 他部署の制約を無視して要求だけを通そうとする。

相手と目的に合わせて情報量と語彙を整え、合意形成の手順を短く回す――この基本が任せやすさを決めます。

3. 3Dスキルの範囲・実務経験の深さ

評価されるのは「知っている量」より、工程横断の理解を仕事に落とせるかどうかです。モデリング〜アニメーション〜エンジン実装の流れを把握し、穴が出た時に一時的にカバーできる人は重宝されます。さらに、ワークフローを最適化してチームに波及する改善を作れると、役割の幅が広がります。

良い例

  • 前処理の設計(命名・階層・単位・法線・マテリアル分割)から、エンジン側の出力チェックまで一貫して説明できる。
  • エンジン機能やスクリプトで、手戻り率や作業時間の削減を数値で示せる。

悪い例

  • 「できます」と言いながら担当範囲が見えず、制作前後の比較や検証手順が示されない。
  • 高難度案件だけを選びたがり、スケジュールや役割分担の現実と噛み合わない。

設計→実装→検証までの筋道と数値を一緒に示すだけで、経験の深さが伝わり、評価の不確実性が下がります。

4. ディレクションやPM(プロジェクトマネジメント)への適性

いきなり大役は不要です。小さな進行管理や外注連携から始め、課題の記録と改善を積み上げれば十分です。顧客要件とチーム事情の両方を踏まえ、全体最適の判断を言語化できる人は、任される範囲が自然に広がります。

良い例

  • タスク分解・依存関係・締切の見える化を行い、変更点の影響範囲を都度共有する。
  • 外注ガイド(仕様・命名・提出形式)を簡潔に整え、検収チェックリストでぶれを減らす。

悪い例

  • 外注管理・見積もり・レビューなど非制作タスクを一律に拒む。
  • 顧客や外注との折衝に不安があり、議事の記録や合意の確認を怠る。

まずは小さな進行管理や外注連携から始め、記録と改善を地道に積むことが、制作と管理の両輪を回す近道です。

まとめ

評価が安定するのは、広い工程理解のうえにひとつの深い強みがあり、その手順をなぞれば同じ結果を再現できるときです。相手の前提に合わせて伝え方と情報量を整え、効果は必要な数値で裏づける。小さな進行や外注の実務から任される範囲を少しずつ広げ、やがて全体最適の判断へとつなげられます。

始め方はシンプルです。得意領域を一つに絞って言語化し、前後比較できる作例と手順を整え、合意形成のための確認メモを即時に共有する。この三つがそろえば、採用でも現場でも「任せやすい人」として見られます。