ゲーム制作において「UI(User Interface)」は、プレイヤーがゲームと直接やり取りするための“入り口”となる部分です。たとえば、タイトル画面からメインメニュー、ゲームプレイ時のステータス表示など、あらゆる情報をプレイヤーが理解しやすい形で提示し、同時に世界観やテーマを崩さないように視覚的な演出を行う必要があります。
UIデザイナーは単にボタンやメニューを美しく整えるだけでなく、ゲーム体験全体を支える“設計”を担う重要な役割です。プレイヤーにストレスなくゲームを楽しんでもらうにはどういったレイアウトが良いのか、どのようなアニメーション演出で世界観を高められるのか、そうした要素をチームと議論しながら具体的な画面設計を行います。
本記事では、採用の現場やゲーム業界の情報を踏まえて、UIデザイナーとしてキャリアを築きたい方に向けた具体的なポイントを解説します。書類選考で見られるスキルやポートフォリオの工夫、そして面談で重視される能力など、実務目線からお伝えしていきます。
書類選考で重視されるポイント
必須スキル
1. ツール操作(Photoshop / Illustrator / XD / Figma など)
- レイアウト設計・グラフィック作成
アイコン・ボタン・背景などのUIパーツを制作するうえでPhotoshopやIllustratorは定番ツールです。 - プロトタイプ作成ツール(XD / Figma / Sketch など)
近年のUI制作ではワイヤーフレームやモックアップを迅速に作れるツールが重宝されます。ゲームUIでも画面遷移や配置バランスを共有するため、プロトタイプで分かりやすく提示できることは大きな強みです。
2. Unity (UGUI) / Unreal Engine (UMG) などのゲームエンジンのUI実装経験
- エンジン上でのUIセットアップ
ゲームの画面にUIパーツを載せる際、解像度やアスペクト比などを考慮しながら実装する知識が求められます。 - アニメーションや遷移演出
UIアニメーションや演出(フェードイン、スライド、エフェクトなど)を実装・調整できると、プレイヤーの没入感を高める上で評価されます。
3. ゲームUIの基本的な設計思想
- ユーザビリティへの理解
ボタンの大きさ・配置、文字の可読性、情報の優先順位付けなど、プレイヤーが快適に遊べるレイアウトを考えられること。 - ゲームジャンル別のUI設計
RPG・アクション・パズルなど、ジャンルによって最適なUI構成は大きく異なります。複数ジャンルのUI制作に関わった経験や知識は高く評価されます。
歓迎されるスキル
1. モーションデザイン・エフェクト制作(After Effects / Spine / 2Dアニメーションなど)
- UIの遷移時にエフェクトやアニメーションを加え、魅力的に見せる技術。
- たとえば「メニューを開くときの動き」「ボタンを押したときの反応」を演出できると、製品クオリティをぐっと引き上げられます。
2. プログラミングの基礎知識(C# や JavaScript など)
- フロントエンド部分の実装でスクリプトを多少触れる、スクリプト担当者とスムーズに連携できる、という点は大きなアドバンテージになります。
- UIアニメーションのパラメータを自分で微調整したり、テキストや画像の差し替えを自動化したりと、作業効率アップに貢献できるケースがあります。
3. グラフィックスタイルの幅
- カジュアル / リアル系 / ファンタジー / SFなど、様々なテイストに対応できるスキル。
- スマホ向けの“ゴチャゴチャ感”を抑えたシンプルUIや、大型タイトルのゴージャスなUIなど、表現の幅が広いほど重宝されます。
その他の評価ポイント
具体的な実績の記載
どれだけのスキルがあっても、**「どのプロジェクトで、どの画面やパーツを担当したのか」**が明確になっていないと評価されにくいのが実情です。
- 例: 「ソーシャルゲームでイベント画面のUIデザインを担当」「コンシューマ向けRPGのメインメニューやステータス画面を制作」など、具体的に書くことで採用側がイメージしやすくなります。
ポートフォリオの内容
- 幅広いアートスタイルとレイアウトの事例
複数のゲームジャンルを想定したUIや、コンセプトアートから実機実装までの流れをまとめると説得力が上がります。 - プロトタイプやモックアップの公開
静止画だけでなく、モーションや画面遷移を確認できる動画やリンクがあると、実務能力がより伝わります。 - 注意: AI生成のグラフィックや“テンプレを使い回しただけ”の作品
実際の業務で応用力があるかどうかを見極めるためにも、なるべく自分で制作・調整した事例を中心に示しましょう。
面談で重視される要素
制作能力と柔軟性
- 自身の担当箇所を明確に説明
書類やポートフォリオで見せたUI画面・機能について、「どういう狙いがあったのか」「使用したソフトウェア・手法」「工夫した点・苦労した点」などを、論理的に説明できると好印象です。 - 問題解決型の思考
ボタンサイズやフォント、情報量が過多/不足など、UIならではのトラブルに対して、どう解決したかを具体的に述べられると評価されます。
自主的な課題解決力
- ゲーム仕様の変更・要望追加への柔軟対応
開発途中で仕様変更はつきもの。UIデザイナーとして「この仕様変更でUIにどんな影響があるか」を即座に把握し、新たなデザイン案を提示できる姿勢が求められます。 - 制作環境やツールへの提案力
UI画面管理やバージョン管理を円滑にするために、より適切なプラグインやツールを提案するなど、チームの生産性を上げる働きかけは高く評価されます。
得意領域の明確化
- 2Dグラフィック・モーショングラフィックが得意
または、情報設計・UXリサーチに強みがある、など、自分の強みがどこにあるのかを明言しておくと、採用側が「どのプロジェクトにアサインするか」をイメージしやすくなります。
チームでの協調性
- コミュニケーション能力
UIデザイナーはプランナー・エンジニア・アーティスト・サウンドなど様々なメンバーと調整が必要。プロジェクトの進捗や意見交換をスムーズに行うには、積極的なコミュニケーションと柔軟な態度が欠かせません。 - 建設的な議論
「ユーザー体験を良くするにはどうすればいいか」「クライアントやチームリーダーからの要望にどう応えるか」などをポジティブに話し合えるかが重要です。
まとめ
UIデザイナーとしてキャリアアップを目指すなら、ツール操作やデザインセンスだけでなく、ユーザビリティや情報設計、さらにはゲームの世界観への理解やプランナーとの連携力が求められます。
- 書類選考段階では、具体的な実績や制作工程、使用ツールを明記したポートフォリオが大きな武器になります。
- 面談では、チームの一員としてプロジェクトを円滑に進めるためのコミュニケーションスキルや、問題解決に向けた取り組みをアピールしましょう。
ゲームUIは「ゲームの第一印象」を左右するだけでなく、プレイの心地よさや継続率にも大きく貢献する要素です。
見た目のかっこよさと使いやすさを高いレベルで両立させるためにも、常にトレンドを追い、ユーザー目線のデザインを磨き続けることが、UIデザイナーとしての成長につながるでしょう。
ぜひ本記事を参考に、自身の強みを再確認しながら、より魅力的なUIデザインを実現してみてください。